買い切り版のOffice 2019を使い続けてきた方にとって、2026年は一つの区切りの年になります。すでに2025年10月14日でOffice 2016/2019のサポートは終了しており、さらに2026年7月13日からは、Office 2019 for Macが「機能制限モード」に入る見込みです。このモードに入ると、ファイルを開いて印刷することはできても、編集・保存・新規作成ができなくなります。Macで買い切り版を使ってきた方には、無視できない変化です。
この記事では、何が、いつ、どのプラットフォームで起きるのかを正確に整理したうえで、買い切り版ユーザーに残された選択肢を冷静に並べていきます。あおるつもりはありません。「すぐ全部使えなくなる」といった話には誤解も混じっているので、まずは事実を切り分けることから始め、そのうえで落ち着いて次の一手を考えられるようにします。

何がいつ起きるのか|日付とプラットフォームを正確に切り分ける
このテーマは、日付とプラットフォームが入り組んでいて、ネット上でも混同されがちです。最初にここを正確に押さえます。
| 出来事 | 時期 | 対象 |
|---|---|---|
| M365サービスへの接続サポート終了 | 2023年10月10日 | Office 2019 / 2016(Win・Mac) |
| Office 2016 / 2019 サポート終了 | 2025年10月14日 | 買い切り版全体 |
| 機能制限モードへ移行 | 2026年7月13日 | Office 2019 for Mac(および古いApple OS) |
とくに大事なのは、3行目の「2026年7月13日の機能制限モード」が、Mac版のOffice 2019に特有の話だという点です。これは証明書まわりの事情によるもので、Macで2019を使っている場合、この日を境に編集・保存・新規作成ができなくなる見込みです。加えて、macOS 11 Big Sur、iOS 16、iPadOS 16以前の古いApple OSを使っている環境も制限の対象とされています。
一方、Windows版のOffice 2019は、7月13日に一斉にロックされるわけではありません。Windows版は2025年10月14日に延長サポートが終了しており、その後は「アプリ自体は動き続けるが、セキュリティ更新やバグ修正、サポートが提供されない」状態です。動かなくなるのではなく、守られなくなる、という違いです。この区別を曖昧にしたまま不安になる必要はありません。
「使える」と「安全に使える」は違う|サポート終了の本当の意味
Windows版が「動き続ける」と聞くと、「じゃあそのまま使えばいい」と思うかもしれません。ですが、ここで「使える」と「安全に使える」を分けて考える必要があります。
Microsoftの公式説明でも、サポート終了後のOffice 2016/2019アプリは引き続き機能しうるものの、新たに見つかった脆弱性に対するセキュリティ更新が提供されないため、深刻なセキュリティリスクにさらされる可能性があり、時間とともに品質や性能が低下する恐れがある、とされています。
つまり、ファイルが開けるかどうかという目先の話ではなく、新しく発見される穴がふさがれないまま使い続けることのリスクが問題です。個人で使う分にも注意が要りますが、業務で顧客データや取引情報を扱うなら、なおさら看過できません。「動くから大丈夫」ではなく「守られていないものを業務で使っていいのか」という視点で判断するべきです。
とくに、Office文書はマクロやファイルを通じた攻撃の入り口になりやすいことが知られています。更新が止まったソフトは、そうした攻撃に対して無防備になりがちです。一台のパソコンの問題にとどまらず、取引先とやり取りするファイルを介して被害が広がる可能性も考えると、サポートの切れた環境を業務で使い続ける判断は、慎重であるべきです。コストを惜しんで古い環境に留まった結果、情報漏えいで失う信用は、ソフトの費用とは比べものになりません。
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よくわかる Microsoft 365 使いこなし術(富士通ラーニングメディア)
Teams・SharePoint・OneDrive・OneNoteなど、Microsoft 365ならではの機能を使いこなすためのテクニック集です。買い切り版からサブスクへ移る際、何が新しく使えるようになるのかをつかむのに役立ちます。
買い切り版ユーザーに残された3つの選択肢
では、これまで買い切り版を使ってきた方には、どんな道があるのか。大きく分けて三つです。それぞれの向き不向きを並べます。
| 選択肢 | 形態 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Microsoft 365 | サブスク(月額・年額) | 常に最新を使いたい/Copilotなど新機能を使いたい | 使い続ける限り費用が発生 |
| Office LTSC(2021/2024) | 買い切り(永続) | サブスクが苦手/一度買って長く使いたい | 主に法人向けの位置づけ・新機能は限定的 |
| 無料の代替ソフト | 無料 | 個人利用で機能が限定的でよい | Excelファイルの完全互換は保証されない |
選択肢1:Microsoft 365(サブスクリプション)
Microsoftが公式に第一の移行先として推奨しているのが、サブスク版のMicrosoft 365です。常に最新のバージョンが使え、セキュリティ更新も継続的に届きます。前述したCopilotのような新機能も、このサブスク版で順次使えるようになります。デメリットは、使い続ける限り費用がかかること。買い切りに慣れた人には心理的な抵抗があるかもしれませんが、「守られ続ける」ことへの対価と捉えると見方が変わります。
選択肢2:Office LTSC(買い切りを続けたい人へ)
「どうしても毎月の支払いは避けたい」という方には、買い切り(永続ライセンス)のOffice LTSCという道があります。Microsoftの接続サポート表では、Office LTSC 2021は2026年10月13日まで、Office LTSC 2024は2029年10月9日まで、M365サービスへの接続がサポートされています。一度買えば長く使えますが、主に法人向けの位置づけで、サブスク版のような新機能の追加は限定的です。買い切りの安心感を取るか、最新機能を取るかの選択になります。
選択肢3:無料の代替ソフト
個人利用で、それほど高度な機能を使わないのであれば、無料の表計算・文書作成ソフトという選択肢もあります。費用はかかりませんが、Excelファイルとの完全な互換性は保証されません。複雑な関数や書式を使ったファイルをやり取りする場面では、レイアウトが崩れたり関数が再現されなかったりすることがあります。受け取った相手がExcelを使っている前提の業務では、慎重に検討する必要があります。
もう少し踏み込んで、選び方の目安を言葉にしておきます。判断の軸は、結局のところ「費用」と「互換性」と「最新機能」の三つです。最新機能とセキュリティ更新を最優先するならMicrosoft 365、毎月の支払いを避けたいならOffice LTSC、費用を極力かけたくない個人利用なら無料ソフト、という対応になります。注意したいのは、安さだけで無料ソフトを選んだ結果、相手から届いたExcelファイルが崩れて開けず、結局やり直しになる——というケースです。費用の節約が、別の場所で時間のロスを生むこともあります。自分の使い方で「何を一番大切にするか」を先に決めてから、選択肢を当てはめるのが失敗しないコツです。
どれを選んでも残る課題|「ソフトが変わっても操作の土台は要る」
ここで一つ、見落とされがちな点に触れておきます。どの選択肢を選んでも、結局「表計算ソフトを使いこなす力」そのものは必要だ、ということです。
Microsoft 365に移っても、Office LTSCにしても、無料ソフトにしても、SUMやVLOOKUP、ピボットテーブルといった基本操作の考え方は共通しています。バージョンが変わってリボンの配置が少し動いても、関数の役割や、データを集計する発想は変わりません。逆に言えば、ソフトの乗り換えに不安を感じる人ほど、操作の土台が曖昧なまま「なんとなく使っていた」可能性があります。
この機会は、自分の表計算スキルを棚卸しする好機でもあります。新しい環境に移るとき、操作の基礎がしっかりしていれば、ボタンの位置が変わっても迷いません。基礎が固まっていれば、移行はただの「引っ越し」で済みます。逆に基礎があやふやだと、移行のたびに一から覚え直す羽目になります。
具体的に「移行に強い基礎」とは何か。たとえば、合計を出すときに、セルを一つずつ足していくのではなくSUM関数を使う発想。条件に合うものだけを数えるときにCOUNTIFやSUMIFを思い浮かべられること。表を縦横に集計したいときにピボットテーブルが頭に浮かぶこと。こうした「やりたいことと、それを実現する機能の結びつき」が身についていれば、ソフトのバージョンが変わっても、画面のどこかに同じ機能があるはずだと探せます。逆に、いつも同じボタンを場所で覚えているだけだと、配置が変わった瞬間に手が止まります。バージョンに依存しないのは「機能の名前と役割」、依存するのは「ボタンの位置」。この違いを意識しておくと、どんな移行も怖くなくなります。
学習者・これから学ぶ人への影響
これからExcelを学ぼうとしている方、あるいはMOS試験の取得を考えている方にとって、今回の件はどう関係するのでしょうか。
結論から言えば、学習環境はできるだけ新しいバージョンに合わせておくのが無難です。MOS試験は、その時点でサポートされているバージョンに対応した出題が中心になります。サポートの切れた古いOffice 2019で練習を続けると、試験のバージョンと操作画面がずれてしまい、学習効率が落ちます。これから本格的に学ぶなら、Microsoft 365など現行バージョンで練習するのが、結局は近道です。
とはいえ、すでにExcelの基礎を身につけている人が、バージョンが変わるたびに大きく学び直す必要はありません。前の章で書いたとおり、関数や集計の考え方は共通だからです。大事なのは、特定のバージョンの「ボタンの位置」を暗記することではなく、「この処理はどの関数で、どう組むか」という、バージョンに依存しない土台を持っておくことです。
もう一つ、学習者にとって今回の件が示す教訓があります。それは「ソフトはいつか必ず変わる」という前提で学ぶ姿勢の大切さです。Office 2019も、登場したときは最新でした。それが数年でサポート終了を迎え、移行を迫られている。これはどのソフトにも起こることです。だとすれば、特定のバージョンの画面に依存した覚え方ではなく、どのバージョンでも通用する「何をしたいか」を起点にした学び方をしておくほうが、長い目で見て損をしません。MOS試験の学習は、まさにこの「機能を体系的に理解する」訓練でもあります。資格そのものだけでなく、変化に強いスキルの土台づくりとして取り組む価値があります。
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Before / Afterで見る移行後の変化
買い切り版から移行すると、日々の使い勝手はどう変わるのか。Microsoft 365へ移った場合を例に、Before(Office 2019のまま)とAfter(移行後)を並べてみます。
| 観点 | Before(Office 2019のまま) | After(Microsoft 365へ移行) |
|---|---|---|
| セキュリティ更新 | 提供されない | 継続して提供される |
| 新機能 | 追加されない | Copilotなど順次追加 |
| Mac版の編集 | 7/13以降は制限 | 制限なく利用可能 |
| 費用 | 追加なし(既購入分) | 月額・年額が発生 |
| ファイル互換 | 問題なし | 問題なし |
こうして並べると、移行で得られるのは主に「守られ続けること」と「新機能」、引き換えに発生するのが「費用」だと見えてきます。費用を払う以上、その分の価値を引き出せるかどうかは、結局は使う人のスキル次第です。最新機能が使えても、基礎操作が身についていなければ宝の持ち腐れになります。だからこそ、移行とスキルの見直しはセットで考えるのが得策です。
移行を考えるためのチェックリスト
最後に、自分がどう動くべきかを判断するためのチェックリストを置いておきます。あわてて契約や購入をする前に、一度立ち止まって確認してみてください。
- 自分が使っているのはWindows版かMac版か(7月13日の機能制限はMac版2019が対象)
- 業務で機密データを扱っているか(扱うならセキュリティ更新のない環境は避ける)
- 毎月の支払いと一度の買い切り、どちらが自分に合うか
- Excelファイルを他人とやり取りするか(するなら無料ソフトの互換性に注意)
- 関数・集計の基礎は、バージョンが変わっても通用する形で身についているか
このうち最後の項目は、ソフトの選択そのものとは別に、これからずっと効いてくる視点です。どの環境を選んでも、表計算の基礎が固まっていれば移行はスムーズです。今回のような節目を、操作スキルを見直すきっかけにしてみてください。
よくある質問
Q1. 2026年7月13日に、すべてのOffice 2019が使えなくなるのですか
いいえ。7月13日からの機能制限モードは、Office 2019 for Mac(および古いApple OS環境)が対象です。Windows版のOffice 2019は2025年10月14日に延長サポートが終了していますが、7月13日に一斉に止まるわけではなく、アプリ自体は引き続き動きます。ただしセキュリティ更新は提供されません。
Q2. 機能制限モードに入ると何ができなくなりますか
既存ファイルを開いて印刷することはできますが、編集・保存・新規作成ができなくなる見込みです。閲覧専用に近い状態になると考えてください。
Q3. サポートが終わったOffice 2019を業務で使い続けるのは危険ですか
推奨されません。Microsoftは、サポート終了後のアプリは動作しうるものの、新たな脆弱性へのセキュリティ更新が提供されず、深刻なリスクにさらされる可能性があると説明しています。とくに機密データを扱う業務では、更新の続く環境への移行を検討してください。
Q4. 買い切り版を続けたいのですが方法はありますか
Office LTSC(2021/2024)という永続ライセンスの選択肢があります。接続サポートはLTSC 2021が2026年10月13日まで、LTSC 2024が2029年10月9日までです。ただし主に法人向けの位置づけで、サブスク版のような新機能の追加は限定的です。
Q5. 無料の代替ソフトで十分ではないですか
個人利用で機能が限定的でよければ選択肢になります。ただしExcelファイルとの完全な互換性は保証されず、複雑な関数や書式は再現されないことがあります。Excelユーザーとファイルをやり取りする業務では慎重な検討が必要です。
Q6. これからMOS試験を目指すなら、どのバージョンで練習すべきですか
できるだけ新しい、サポートされているバージョンで練習することをおすすめします。MOS試験は現行バージョンに対応した出題が中心のため、サポートの切れた古いバージョンで練習すると画面や操作がずれ、学習効率が落ちます。
Q7. バージョンが変わると、覚えた操作は無駄になりますか
なりません。SUMやVLOOKUP、ピボットテーブルといった関数や集計の考え方は、バージョンが変わっても共通です。ボタンの位置が多少動いても、基礎が固まっていれば迷わず移行できます。むしろこの機会に、バージョンに依存しない土台を確認しておくとよいでしょう。

まとめ — あわてず、事実を切り分けて選ぶ
Office 2019をめぐる2026年の変化は、Mac版が7月13日から機能制限モードに入ること、そして買い切り版全体が2025年10月14日にサポート終了済みであることの二つが核心です。「すぐに全部使えなくなる」のではなく、「Macは編集ができなくなる」「Windowsは守られなくなる」と切り分けて捉えれば、不要な不安は消えます。
残された選択肢は、Microsoft 365(サブスク)、Office LTSC(買い切り)、無料の代替ソフトの三つ。自分がWindowsかMacか、機密データを扱うか、ファイルを他人とやり取りするか——こうした条件で、落ち着いて選べば大丈夫です。そしてどれを選んでも、表計算の基礎スキルだけは共通して必要です。今回の節目を、自分のExcelスキルを見直すきっかけにしてみてください。
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