「受注テーブルにレコードがある顧客だけでなく、一度も受注していない顧客も含めてリストを出したい」——こうした要求に応えるのが外部結合です。Accessのクエリデザインビューで複数テーブルを結合する際、既定の内部結合では両テーブルに一致するレコードしか表示されませんが、結合プロパティを変更するだけで左外部結合・右外部結合に切り替えられます。
結合プロパティは「結合線をダブルクリックして開くダイアログ」で設定します。3種類の選択肢(オプション1・2・3)の意味を正しく理解することが、業務データの正確な抽出と、MOS Access試験の「クエリの作成と変更」スキルに直結します。
本記事では、結合の基本概念から結合プロパティダイアログの操作手順、内部結合・左外部結合・右外部結合それぞれの挙動と使い分け、不一致レコードの抽出パターン、多対多リレーションでのクエリ設計、MOS試験の出題ポイントまで体系的に解説します。
Accessのクエリ結合とは何か
Accessのクエリで複数のテーブルを組み合わせるとき、どのレコードを「組み合わせる対象」にするかを決めるルールが結合(JOIN)です。クエリデザインビューでテーブルを追加すると、リレーションシップが設定されていれば自動的に結合線が引かれます。
結合には大きく分けて3種類あり、どれを選ぶかによって結果セットのレコード数が変わります。「正しい結合を選べているか」を意識しないと、数値の合計が合わない・件数が足りないといった集計ミスに直結します。
クエリデザインビューで結合線を確認する
クエリをデザインビューで開くと、テーブル間のリレーションシップが細い線(結合線)で表示されます。この結合線が、クエリ実行時にどのフィールドでテーブルを照合するかを示しています。
- 結合線がない場合:クロス結合(全組み合わせ)が発生し、想定外の大量レコードが返る
- 結合線がある場合:結合プロパティに従ってレコードが組み合わされる
リレーションシップが未設定でも、クエリデザインビューで手動で結合線を引けます。結合させたいフィールド同士をドラッグ&ドロップするだけで結合線が作成されます。
結合プロパティダイアログの開き方と3つのオプション
結合の種類を変更するには結合プロパティダイアログを使います。
ダイアログを開く手順
- クエリをデザインビューで開く
- 変更したい結合線をダブルクリックする(または右クリック→「結合プロパティ」を選択)
- 「結合プロパティ」ダイアログが表示される
ダイアログには「左のテーブル/クエリ」「右のテーブル/クエリ」「左の列名」「右の列名」と、3つのラジオボタン(オプション1・2・3)が表示されます。
3つのオプションの意味
| オプション | 結合の種類 | 含まれるレコード | SQLでの表現 |
|---|---|---|---|
| 1(既定) | 内部結合(INNER JOIN) | 両テーブルで結合フィールドが一致するレコードのみ | INNER JOIN |
| 2 | 左外部結合(LEFT OUTER JOIN) | 左テーブルの全レコード+右テーブルで一致するレコード | LEFT JOIN |
| 3 | 右外部結合(RIGHT OUTER JOIN) | 右テーブルの全レコード+左テーブルで一致するレコード | RIGHT JOIN |
「左テーブル」「右テーブル」とはダイアログ上部に表示されるテーブル名の左右の並び順です。デザインビューのレイアウト上の位置とは異なる場合があるため、ダイアログ内の表示で確認してください。
オプション選択後、「OK」をクリックすると結合線の端に矢印が付き、外部結合の向きが視覚的に確認できます。矢印が付いた側が「全レコードを含まない側(一致するものだけ返す側)」で、矢印が指している方向のテーブルが全件対象です。
内部結合(オプション1)の動作と使いどころ
内部結合はAccessの既定値であり、両テーブルで結合フィールドが一致するレコードだけを返す最も基本的な結合方法です。
内部結合の具体例
「受注テーブル」と「顧客テーブル」を「顧客ID」で内部結合した場合、受注テーブルに存在する顧客IDと顧客テーブルに存在する顧客IDが一致するレコードのみが返ります。
| 状況 | 内部結合の結果 |
|---|---|
| 受注テーブルにのみ存在する顧客ID(孤立レコード) | 結果に含まれない |
| 顧客テーブルにのみ存在する顧客ID(未受注の顧客) | 結果に含まれない |
| 両方のテーブルに存在する顧客ID | 結果に含まれる |
内部結合が適している場面
- 「受注がある顧客の一覧」のように、両テーブルに存在するデータだけが必要な場合
- 参照整合性が正しく設定されており、孤立レコードが存在しないと確信できる場合
- マスタとトランザクションを照合して一致分のみ集計する場合
左外部結合(オプション2)の動作と使いどころ
左外部結合は、左テーブルの全レコードを返し、右テーブルに一致するレコードがない場合はNullを補完する結合方法です。「一度も注文していない顧客を含む全顧客リスト」のように、マスタ側のレコードを漏らさず出力したいときに使います。
左外部結合の具体例
「顧客テーブル(左)」と「受注テーブル(右)」を「顧客ID」で左外部結合した場合のイメージを示します。
| 顧客ID | 顧客名 | 受注番号(右テーブル由来) |
|---|---|---|
| C001 | 山田商店 | R001 |
| C001 | 山田商店 | R003 |
| C002 | 田中食品 | R002 |
| C003 | 鈴木電機 | Null(受注なし) |
顧客C003は受注テーブルに対応レコードがありませんが、左テーブル(顧客テーブル)のレコードとして結果に含まれます。右テーブル由来のフィールド(受注番号など)はNullとして表示されます。
左外部結合が適している場面
- マスタの全件リストに、関連する明細や実績を付加して出力する場合(未実績のマスタも含む)
- 「購入履歴がない会員一覧」を抽出するための前段クエリ
- 在庫テーブルの全商品に、出荷実績を付加して欠品・未出荷を確認する場合
左外部結合の設定手順
- クエリデザインビューで結合線をダブルクリックして「結合プロパティ」ダイアログを開く
- 「全レコードを含めたいテーブル」が左テーブルか右テーブルかをダイアログ内で確認する
- 全件を含めたいテーブルが左側(ダイアログの左欄に表示)になっている場合は「オプション2」を選択する
- 「OK」をクリックして確定する
- 結合線の右端(右テーブル側)に矢印が付いていれば正しく設定されている
右外部結合(オプション3)の動作と使いどころ
右外部結合は右テーブルの全レコードを返す外部結合です。論理的には左外部結合をテーブルの左右を入れ替えたものと同等で、どちらを使っても抽出される内容は同じになります。
Accessのクエリデザインビューでは、テーブルを追加した順序や画面上の配置によって「どちらが左テーブルか」が決まります。意図した結果になるよう、ダイアログで左右のテーブル名を確認してからオプションを選択することが重要です。
右外部結合が適している場面
- 全件を出力したいテーブルが結合プロパティダイアログ上で右側に配置されている場合
- 既存クエリの結合線をそのまま活かしながら、右テーブルを主体としたい場合
実務では左外部結合のほうが使用頻度が高く、テーブルの配置を調整して左外部結合(オプション2)に統一するほうがクエリの可読性が上がります。
外部結合と「Is Null」を組み合わせて不一致レコードを抽出する
左外部結合の応用として、右テーブルに一致しないレコードだけを絞り込むパターンがあります。「受注がない顧客だけを取り出す」がこの典型例です。
設定手順
- 顧客テーブル(左)と受注テーブル(右)を左外部結合(オプション2)で結合する
- 右テーブルの結合フィールド(例:受注テーブルの顧客ID)を「フィールド」行に追加する
- 同フィールドの「抽出条件」行に
Is Nullと入力する - クエリを実行すると、受注テーブルに対応レコードがない顧客(Null補完された行)のみ返る
このパターンは不一致クエリとも呼ばれ、Accessには「不一致クエリウィザード」が用意されています。ウィザードを使えば同じ結果を自動生成できますが、仕組みを理解しておくと条件を追加したり既存クエリに応用したりする際に役立ちます。
不一致クエリの活用例
| 左テーブル(全件) | 右テーブル(比較対象) | 抽出される内容 |
|---|---|---|
| 顧客テーブル | 受注テーブル | 一度も受注していない顧客 |
| 商品テーブル | 出荷テーブル | 出荷実績がない商品 |
| 社員テーブル | 研修受講テーブル | 研修を受講していない社員 |
| カテゴリテーブル | 商品テーブル | 商品が登録されていないカテゴリ |
多対多リレーションでのクエリと結合
多対多の関係(例:受注と商品)では中間テーブル(受注明細テーブル)を経由して2つの結合が発生します。この場合、それぞれの結合線に対して独立した結合プロパティを設定できます。
多対多クエリの典型構成
| テーブル | 結合フィールド | 結合先 |
|---|---|---|
| 受注テーブル | 受注ID | 受注明細テーブル.受注ID |
| 受注明細テーブル | 商品ID | 商品テーブル.商品ID |
受注と受注明細の結合・受注明細と商品の結合をいずれも内部結合にすると、「受注明細が1件以上ある受注」かつ「商品マスタに存在する商品コード」のレコードだけが返ります。商品マスタに存在しない商品コードが明細に入り込んでいるデータ不整合を発見するには、商品テーブルとの結合を左外部結合(受注明細テーブルが左)に変更し、商品名がNullの行を抽出します。
集計クエリでの注意点
集計クエリ(集計行をオンにして GROUP BY を使うクエリ)で外部結合を組み合わせると、Null値の扱いに注意が必要です。COUNT関数はNullをカウントしないため、「受注のない顧客の受注件数は0件」を正確に表現するには Count([受注テーブル].[受注ID]) のように右テーブルの具体的フィールドを指定します。Count(*) ではNull行も1件としてカウントされてしまいます。
結合プロパティに関するよくあるトラブルと対処法
| 症状 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 結合線をダブルクリックしてもダイアログが開かない | クリック位置がずれている | 結合線の中央付近を正確にダブルクリックする。または右クリック→「結合プロパティ」を選択する |
| オプション2を選んだのに全件が出てこない | 左右のテーブルを取り違えている | ダイアログの「左のテーブル/クエリ」欄を確認し、全件を出したいテーブルが左であることを確かめる |
| クエリ結果が想定より多い(全組み合わせが出る) | 結合線が設定されていないクロス結合になっている | デザインビューで結合線を引き、適切な結合フィールドを指定する |
| Is Null条件を追加したが全件返ってくる | 内部結合のままになっている(内部結合ではNullが発生しない) | 左外部結合(オプション2)に変更してから Is Null 条件を設定する |
| 更新クエリに変換しようとするとエラーが出る | 外部結合を含むクエリは更新クエリとして使用できない場合がある | サブクエリや一時テーブルを経由する設計に変更する |
MOS Access試験での結合プロパティ出題ポイント
MOS Access 365試験(MO-500)では、結合プロパティの操作は「クエリの作成と変更」スキル領域に含まれます。試験では実際にデータベースを操作してクエリを作成・変更する形式が出題されます。分野別の出題数・配点は公表されていません。
試験で問われる操作
- 結合プロパティダイアログを開ける:結合線のダブルクリックまたは右クリックメニューからダイアログを起動できる
- 内部結合・外部結合を切り替えられる:オプション1・2・3の意味を理解し、問題文の要件に応じて正しい選択肢を選べる
- 結合線の矢印から結合の種類を読み取れる:矢印の有無・向きで内部結合か外部結合かを判断できる
- Is Nullを組み合わせた不一致抽出ができる:外部結合と Is Null 条件を組み合わせて特定レコードを絞り込める
MOS試験 結合プロパティ操作チェックリスト
| 確認ポイント | 操作内容 | 難易度 |
|---|---|---|
| クエリデザインビューで結合線を確認できる | テーブル間の結合線の有無と本数を把握できる | ★☆☆ |
| 結合プロパティダイアログを開ける | 結合線をダブルクリックまたは右クリックで開ける | ★☆☆ |
| 内部結合(オプション1)を設定できる | 両テーブル一致のみ返す既定設定を確認・変更できる | ★☆☆ |
| 左外部結合(オプション2)を設定できる | 左テーブルの全件+一致分を返す設定に変更できる | ★★☆ |
| 右外部結合(オプション3)を設定できる | 右テーブルの全件+一致分を返す設定に変更できる | ★★☆ |
| 外部結合の向き(矢印)を読み取れる | 結合線の矢印から結合の種類を判断できる | ★★☆ |
| 外部結合+Is Nullで不一致抽出できる | 左外部結合に設定後、右テーブルの結合フィールドに Is Null 条件を追加できる | ★★★ |
MOS試験の受験情報(2026年7月時点)
MOS Access 365(MO-500)の基本情報は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 50分 |
| 採点 | 1,000点満点 |
| 合格点 | 非公開(550点~850点が目安とされることが多い) |
| 出題形式 | マルチプロジェクト(5個~10個のプロジェクト、1プロジェクトに1~7個の小問) |
| 受験料(一般) | 12,980円(税込) |
| 受験料(学割) | 9,680円(税込) |
| 合格率 | 公表されていません |
試験申込の締切は試験日のおよそ1か月前が目安ですが、回により異なります。正確な日程は公式サイトの試験スケジュールで確認してください。
まとめ:結合プロパティの理解でAccessクエリの表現力が広がる
本記事のポイントをまとめます。
- 結合プロパティダイアログは結合線をダブルクリックして開く。3つのオプション(内部結合・左外部結合・右外部結合)を切り替えられる
- 内部結合(オプション1):両テーブルに一致するレコードのみ返す。既定値で最も基本的な結合方法
- 左外部結合(オプション2):左テーブルの全レコードを返し、右テーブルに一致がない行はNullで補完される。マスタ全件出力に使う
- 右外部結合(オプション3):右テーブルの全レコードを返す。左外部結合とテーブルの左右が逆の関係
- 外部結合+Is Null:一致しないレコードだけを絞り込む不一致クエリに使える
- 集計クエリとの組み合わせ:Count(*)ではなく右テーブルの具体フィールドを指定してNullを正しく扱う
- MOS試験では:「クエリの作成と変更」スキル領域で、ダイアログの操作と矢印の読み取りが問われる
結合プロパティは見落とされやすい機能ですが、「なぜ件数が合わないのか」を解決する鍵になることが多いです。デザインビューで結合線をダブルクリックする習慣を身につけ、業務データの正確な集計とMOS試験合格の両方を目指してください。
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