2026年5月、Excelの=COPILOT()関数がWeb参照に対応し、Microsoft 365 Insider(Beta)とFrontierで配信が始まりました。セルに数式として書いたプロンプトから、ライブのWeb情報をたぐり寄せて結果を返す、という挙動です。ここで一度立ち止まりたいのは、この「COPILOT関数」が、画面の右側に出てくるCopilotのチャットや、最近話題のCopilotエージェントとは、別物だという点です。
名前が同じ「Copilot」なので混同されがちですが、関数はセルの中に書くもので、エージェントはあなたの代わりに一連の作業をこなすものです。この記事では、COPILOT「関数」だけに絞って、構文・できること・できないこと・使うときの制限を公式情報から整理します。そのうえで、MOS Excelの学習に取り組んでいる方が、この関数とどう距離を取ればいいのかを、私なりの考えで書いていきます。

COPILOT「関数」とCopilot「エージェント」は何が違うのか
まず、この区別をはっきりさせておきます。ここを曖昧にしたまま読むと、後半の話がぼやけてしまうからです。
Copilotには、大きく分けて三つの顔があります。一つ目は、Wordやexcelの画面横に出てくるチャット型のCopilot。文章で指示すると、要約や下書きを返してくれます。二つ目は、2026年に入って段階的に提供が広がっているCopilotエージェント。これは「請求書を集計してメールで送る」のような複数ステップの作業を、ある程度まとめて引き受ける仕組みです。当サイトでは、このエージェント機能とMOS試験の関係を別の記事で扱いました。
そして三つ目が、今回の主役であるCOPILOT関数です。これはSUMやVLOOKUPと同じ「ワークシート関数」の仲間で、セルに=COPILOT(...)と入力して使います。チャットでもエージェントでもなく、数式です。結果はセルに返り、複数行・複数列にあふれて表示される(スピルする)こともあります。
| 項目 | COPILOT関数 | Copilotチャット | Copilotエージェント |
|---|---|---|---|
| 使う場所 | セルの中(数式バー) | 画面横のチャット欄 | 裏で動く自動処理 |
| 入力の形 | =COPILOT("…", 範囲) |
自然文の会話 | 指示+ツール連携 |
| 結果の出方 | セルにスピル表示 | チャットに表示 | 作業の実行結果 |
| 得意なこと | 分類・要約・サンプル生成・Web情報の取り込み | 下書き・説明・相談 | 複数ステップの代行 |
| 本記事の対象 | ◯(これだけを扱う) | × | ×(別記事) |
つまりこの記事は、三つあるCopilotのうち、いちばん「Excelの関数らしい」一つだけを取り上げています。残りの二つは別の話だと考えてください。
COPILOT関数の正体|構文とできること
Microsoftの公式ドキュメントによれば、COPILOT関数の構文は次の形です。
=COPILOT(prompt_part1, [context1], [prompt_part2], [context2], ...)
第一引数のprompt_partは必須で、AIにやってほしい作業を文章で書きます。続くcontextは任意で、セル範囲を渡して「このデータを見て答えて」と指示するための引数です。プロンプトと文脈データを交互に並べていけるので、「この範囲を、こういう観点で分類して」といった指定ができます。
公式が想定している使いどころは、次のようなものです。
- 文章の範囲を要約する
- テスト用のサンプルデータを生成する
- レビューやコメントを分類・タグ付けする
- 項目に対する説明文を作る
- Web上の情報を引いてくる(2026年5月の新対応)
結果は一つのセルに収まることもあれば、複数の答えを動的配列としてスピルさせることもできます。たとえば「この100件のレビューを、肯定・否定・中立で分類して」と頼めば、100行分の判定が縦にあふれて返ってくる、というイメージです。
2026年5月の更新点:Web参照に対応
今回の配信で目立つのが、Web参照への対応です。これまでのCOPILOT関数は、基本的に手元のデータとAIモデルの知識の範囲で答えていました。2026年5月のInsider/Frontier向け更新で、Windows・Mac・Webの各環境で、=COPILOT関数からWebを検索し、ライブの情報を取り込んで答えをグラウンディング(裏づけ)できるようになりました。
これは小さくない変化です。たとえば商品名の一覧から、最新の一般的なカテゴリ分けを引いてくる、といった「手元のデータだけでは完結しない」処理が、セルの中で回せるようになるからです。ただし後で触れるとおり、Web参照だからといって数値の正確さが保証されるわけではありません。あくまで「探索的な作業」に向く機能だと、公式自身がはっきり書いています。
COPILOT関数の「できないこと」と制限を正しく知る
新しい関数に触れるとき、できることよりも先に「できないこと・制限」を押さえておくほうが、結局は早く使いこなせます。COPILOT関数には、公式に明記された制限がいくつもあります。
| 制限・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 計算回数の上限 | 10分あたり最大100回までのCOPILOT関数計算 |
| 機密ラベル | Confidential/Highly Confidential ラベルのブックでは動作しない |
| 参照できるデータ | context引数で明示的に渡した範囲のみ。ブック内の他データや他の関数結果は勝手に参照しない |
| 不向きな用途 | 数値計算、ブック内のルックアップ、コンプライアンス上重要な判断 |
| 正確性 | AIを使うため誤った応答を返すことがある(公式明記) |
とくに大事なのは、最後の二つです。COPILOT関数は「だいたい合っていればいい、意味の理解で価値が出る」探索的な作業に向いた関数であって、1円のズレも許されない集計や、社内ルールに直結する判断には使わないでくださいと、Microsoft自身が線を引いています。請求金額の合計はSUMで、商品コードからの単価引き当てはXLOOKUPで、というように、確実性が必要な処理は従来の関数で組むのが正解です。
この「向き・不向き」の感覚は、実は関数全般を学ぶうえでとても役に立ちます。COPILOT関数を使いこなす前提として、「この処理はどの関数で書くべきか」を判断できる目が要る、ということでもあるからです。
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SUMやVLOOKUPなど定番関数の使いどころを、引数の意味から丁寧に解説した一冊です。COPILOT関数に頼る前提として欠かせない「どの処理をどの関数で書くか」の判断力を、基礎から固めたい方に向いています。
COPILOT関数を実務で使うときの現実的な使いどころ
では、現場でどう使えばいいのか。私が見ている範囲で、無理なく価値が出る場面を挙げます。前提として、今はInsider/Frontier向けの段階で、一般提供(GA)の見込みは2026年12月とされています。手元の環境にまだ出ていない方も多いはずなので、「来たら何に使うか」を考えておく、くらいの温度感でちょうどいいと思います。
向いている使い方
たとえば、アンケートの自由記述が数百件あって、ざっくり「満足・不満・要望」に仕分けたい。こういう、人がやると時間はかかるけれど一件あたりの判断は軽い作業は、COPILOT関数のスピル出力と相性がいいです。範囲を渡して「次の意見を満足・不満・要望のどれかに分類して」と書けば、縦一列に判定が並びます。
もう一つは、説明文の下書きです。商品名の一覧から、社内資料用に一行のキャッチを量産する、といった作業。最終的には人が手直しする前提で、たたき台を一気に作る用途なら、十分に役立ちます。Web参照対応によって、一般的な分類軸や最近の言い回しを取り込めるようになったぶん、たたき台の質も上がりました。
具体的な書き方のイメージも一つ挙げておきます。たとえばA列にレビュー文が並んでいるとして、隣のセルに=COPILOT("次の意見を満足・不満・要望のいずれかに分類して", A2:A101)と書く、という形です。プロンプトを第一引数に、判定したいデータ範囲を第二引数に渡しています。結果は分類ラベルが縦に並んでスピル表示されます。ここで大事なのは、渡したのはA列の範囲だけだという点です。COPILOT関数は、明示的に渡していないシートの他の列やほかの数式の結果を勝手に見にいったりはしません。だからこそ、何を文脈として渡すかを自分で決める、という意識が要ります。
避けたほうがいい使い方
逆に、月次の売上合計をCOPILOT関数で出す、社員番号から所属を引く、といった「正解が一つに決まる」処理は避けてください。これはSUMIFSやXLOOKUPの仕事です。COPILOT関数に任せると、もっともらしいけれど微妙にずれた答えが返ることがあり、しかもそれが数式の中に紛れ込むと発見が遅れます。
10分100回という計算回数の上限も、地味に効いてきます。数千行に一気に適用しようとすると上限に当たるので、まずは小さな範囲で試し、挙動を確かめてから広げる、という進め方が安全です。
MOS Excel学習者はCOPILOT関数とどう向き合うべきか
ここからは、MOS Excelの試験対策に取り組んでいる方に向けた話です。結論を先に言えば、試験対策の段階では、COPILOT関数を「使う」必要はありません。むしろ使わずに、従来の関数を手で書ける力を固めるべきです。理由は二つあります。
一つ目。MOS試験は、Copilot機能を含まないクリーンなOffice環境で、手動操作の習熟度を測る試験です。2026年5月時点で、COPILOT関数が出題範囲に追加された動きは確認できません。試験中はそもそもAIに頼れないので、試験対策としては関数を自分で書けることがすべてです。
二つ目。これがより本質的です。COPILOT関数は誤った答えを返すことがある、と公式が認めています。その出力が正しいかどうかを見抜くには、結局のところ「正しい数式を自分で書ける力」が要ります。SUMIFSの第一引数が合計範囲なのか条件範囲なのか、XLOOKUPの検索方向はどう指定するのか——こうした基礎が身についていれば、COPILOT関数の出力を見て「これはおかしい」と気づけます。逆に基礎を飛ばしてAIに頼ると、間違いに気づけない人になってしまいます。
| 学習フェーズ | COPILOT関数との距離 | やること |
|---|---|---|
| MOS対策中 | 使わない | SUM/IF/VLOOKUP/XLOOKUP/SUMIFS等を手で書けるようにする |
| 合格直後 | 仕組みを知る | 関数とAIの守備範囲の違いを理解する |
| 業務で活用 | GA後に試す | 分類・要約など探索的な作業で限定的に使う |
MOS Excelの出題は「ワークブックの管理」「データの管理と書式設定」「高度な数式とマクロ」「高度なグラフとテーブル」といった、手で操作して覚える領域が中心です。COPILOT関数で肩代わりできる部分は、せいぜいそのごく一部にすぎません。試験勉強の時間は、まず確実に得点できる手動操作の習熟に振り向けるのが、合格への近道です。
Before / Afterで見る学習者の意識の変化
COPILOT関数の登場で、学習者の意識はどう変わるべきか。私が思う「望ましい変化」を、対比で書いてみます。
Before(関数登場前の発想):関数は全部自分で覚えなければいけない。AIは関係ない世界。
After(望ましい発想):確実性が要る処理は自分で関数を書く。だいたいでいい探索的な作業は、AIに任せる選択肢もある。その線引きを自分で判断できることが、これからのExcelスキルだ。
大事なのは、AIに任せる範囲が増えたからといって、覚えるべき関数が減るわけではない、という点です。むしろ「任せていい処理かどうか」を見極めるために、関数の知識はこれまで以上に効いてきます。COPILOT関数は、手で書ける力を持っている人にとってこそ、安全に使える道具なのです。
これからExcelとAIを学ぶ人のためのチェックリスト
最後に、COPILOT関数の時代にExcelと向き合うための、確認リストを置いておきます。MOS対策中の方も、すでに実務で使っている方も、自分の立ち位置を点検してみてください。
- COPILOT関数とCopilotエージェントの違いを説明できるか(関数はセル内、エージェントは自動処理)
- 確実性が要る処理を、AIではなく従来関数で書く判断ができるか(合計はSUM、引き当てはXLOOKUP)
- 10分100回・機密ラベルブック非対応などの制限を把握しているか
- COPILOT関数の出力を、自分で正誤判定できるだけの関数知識があるか
- MOS試験ではCopilotが使えないことを理解し、手動操作の習熟を優先しているか
このうち一つでも「あやしい」と感じた項目があれば、そこがあなたの伸びしろです。とくに四つ目の「出力を正誤判定できる関数知識」は、AI時代だからこそ価値が上がっています。関数の組み合わせを実務の文脈で学べる一冊で、土台を厚くしておくと安心です。
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今すぐ使えるかんたんbiz Excel関数+組み合わせ 効率UPスキル大全 Copilot対応(技術評論社)
集計・検索・抽出といった実務頻出の処理を、関数の組み合わせで解く視点でまとめた一冊です。COPILOT関数に「任せていい処理か」を見極める判断力は、こうした組み合わせの引き出しから育ちます。
よくある質問
Q1. COPILOT関数は今すぐ使えますか
2026年5月時点では、Microsoft 365 Insider(Beta)とFrontier向けの段階的提供です。一般提供(GA)の見込みは2026年12月とされています。手元のExcelに出ていない場合は、まだチャネルが届いていないと考えてください。WindowsはBuild 19212.20000以降、Macは16.101以降が目安です。
Q2. COPILOT関数とCopilotチャットはどう違いますか
COPILOT関数はセルに=COPILOT(...)と書く数式で、結果はセルに返ります。Copilotチャットは画面横の会話欄で、文章でやり取りする機能です。同じCopilotという名前ですが、入力の仕方も結果の出方も別物です。
Q3. COPILOT関数で売上の合計を出してもいいですか
おすすめしません。公式が、数値計算やブック内のルックアップには向かないと明記しています。合計はSUM、条件付き合計はSUMIFS、引き当てはVLOOKUP/XLOOKUPと、確実性が要る処理は従来の関数で書いてください。COPILOT関数は分類や要約など、探索的な作業に向いています。
Q4. Web参照に対応すると何が変わりますか
2026年5月の更新で、=COPILOT関数からWebを検索し、ライブの情報を取り込んで答えを裏づけられるようになりました。手元のデータだけでは完結しない分類や説明文づくりで役立ちます。ただしWeb参照だからといって数値が正確になるわけではなく、向くのは探索的な作業のままです。
Q5. 機密データのブックでも使えますか
Confidential/Highly Confidential の機密ラベルが付いたブックでは動作しません。また計算は10分あたり100回までという上限があります。大量の行に一気に適用する前に、小さな範囲で試してください。
Q6. MOS Excelの試験勉強でCOPILOT関数を覚える必要はありますか
2026年5月時点では必要ありません。MOS試験はCopilot機能を含まないクリーンなOffice環境で手動操作を測るため、試験中にAIは使えません。出題範囲にも追加されていません。試験対策の時間は、従来の関数を手で書ける力に振り向けるのが得策です。
Q7. AIに頼ると関数を覚えなくてよくなりますか
逆です。COPILOT関数は誤った答えを返すことがあるため、出力が正しいかを見抜くには、自分で正しい数式を書ける力が要ります。AIに任せていい処理かどうかを判断するためにも、関数の知識はこれまで以上に重要になります。

まとめ — 関数を書ける人ほど、AIを安全に使える
2026年5月、Excelの=COPILOT関数がWeb参照に対応し、セルの中でAIを呼び出して情報を取り込めるようになりました。チャットでもエージェントでもない、れっきとした「関数」です。要約・分類・サンプル生成・Web情報の取り込みといった探索的な作業に向く一方、数値計算や確実性が要るルックアップには向かず、10分100回の上限や機密ラベルブック非対応といった制限もあります。
MOS Excelの学習に取り組んでいる方は、今の段階ではCOPILOT関数を使う必要はありません。むしろ使わずに、SUMやXLOOKUPを手で書ける力を固めることが、合格にも、その先の実務にもつながります。AIに任せていい処理かを見極める目は、結局のところ関数を書ける力から育つからです。関数を書ける人ほど、AIを安全に使える——この順番だけは、これからも変わらないと思います。
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